心臓外科

当科で扱う主な疾患と症状

  • 虚血性心疾患(狭心症・陳旧性心筋梗塞)
  • 心臓弁膜症(大動脈弁狭窄症・大動脈弁閉鎖不全症・僧帽弁狭窄症・僧帽弁閉鎖不全症・三尖弁閉鎖不全症など)
  • 胸部大動脈瘤(上行大動脈瘤・弓部大動脈瘤など)
  • 不整脈 (心房細動など)
  • 成人先天性心疾患(心房中隔欠損症など)

冠動脈バイパス術

CABG術後写真

冠動脈バイパス術(CABG: coronary artery bypass graft)

心臓を栄養する冠動脈に75%以上の狭窄(狭くなること)や閉塞(塞がること)が生じた場合、心筋細胞に虚血症状が出現します。その虚血を解除するために、狭窄·閉塞部位の先に血管をバイパスすることで虚血症状を解除する治療を冠動脈バイパス術といいます。循環器内科の心臓カテーテル治療は狭窄部位を広げる治療であるのに対して、バイパス術は狭窄部位を触らずに血管を植え付けます。冠動脈バイパス術のメリットは、自己組織のみであるため、再狭窄や閉塞の可能性がカテーテル治療より低いことと、生命予後が改善することです。デメリットは、カテーテル治療より侵襲が大きく、短期的なリスクは若干高いです。日本心臓血管外科学会が提供するデータベースの手術死亡率の平均は約1%です。使用するグラフト(血管)は、内胸動脈(胸)·大伏在静脈(足)·胃大網動脈(腹)が主となります。
当院における単独冠動脈バイパス術の平均手術時間は約3~4時間、術後平均在院日数は約10日です。

大動脈弁手術

大動脈弁手術は、大動脈弁狭窄症や大動脈弁閉鎖不全症に対する手術であり、人工弁置換術が一般的です。手術以外の治療法はなく、内科加療は対症療法となります。
人工弁は生体弁と機械弁の2種類があり、生体弁は抗凝固性に優れる反面、耐久性に課題があります。機械弁は耐久性に優れますが、血栓塞栓症の予防にワーファリンという薬を一生内服する必要があります。
人工弁を使用しない大動脈弁形成術がありますが、長期成績は不明で再手術のリスクがあることから、若年者を除いて当院ではあまりお勧めしておりません。
当院における単独大動脈弁置換術の平均手術時間は約3~4時間、術後平均在院日数は約11日です。

僧帽弁手術

僧帽弁手術は、一般的に僧帽弁閉鎖不全症に対する手術です。僧帽弁は構造上形成(修理)が比較的可能な弁であり、僧帽弁形成術が一般的です。当院でも僧帽弁形成術の成功率(弁形成術から弁置換術への変更無し)は90%以上であり、直近2年間の成功率は100%です。ただし病因によっては形成術が不適なものもあるため、その場合はあらかじめ弁置換術をお勧めさせていただきます。手術以外の治療法はなく、内科加療は対症療法となります。
当院における単独僧帽弁形成術の平均手術時間は約3~4時間、術後平均在院日数は約11日です。

大動脈手術

当科における大動脈手術は、胸部大動脈瘤を対象としており、大動脈基部瘤·上行大動脈瘤·弓部大動脈瘤が主となります。治療は人工血管やステントグラフトで置換(交換)してしまいます。手術以外の代替治療がありません。大動脈は各臓器に血流を提供する元となる臓器であり、様々な臓器の虚血症状を引き起こす可能性があるため、手術侵襲が心臓手術の中で特に大きく、合併症は多岐にわたります。とくに脳梗塞·脊髄虚血の合併症が大きな問題となります。脳保護·脊髄保護を行い、低体温循環停止下で手術を行うため、出血のリスクがあります。
大動脈瘤の部位によっては血管内治療によるステントグラフトの加療が可能であり、血管外科と連携してより適した治療をお勧めさせていただきます。
当院における大動脈手術の平均手術時間は約5時間、術後平均在院日数は約14日です。

大動脈瘤術前CT

術前

大動脈瘤術後CT

術後

低侵襲手術

MICS皮切写真

MICS手術:小開胸下冠動脈バイパス術、小開胸下僧帽弁手術、小開胸下心房中隔欠損症根治術

当院では小開胸での低侵襲手術(MICS: minimally invasive cardiac surgery)が可能な方には小開胸手術をおすすめさせていただきます。当院で施行できるMICS手術は、冠動脈バイパス術、僧帽弁手術、心房中隔欠損症根治術などがあります。冠動脈バイパス術は左の胸、僧帽弁手術と心房中隔欠損症根治術は右の胸に小さな皮膚切開(6~10センチ)を行い手術を行います。MICS手術は、皮膚切開が小さく侵襲が小さい反面、技術的に難しいのが難点です。侵襲が小さいため、術後の回復が早いことが利点で、小開胸下冠動脈バイパス術の場合術後4日以降に、小開胸下僧帽弁形成術や心房中隔欠損症根治術の場合術後7日以降に退院可能です。
またMICSによる冠動脈バイパス術は、ほぼ全例手術室で人工呼吸を離脱しております。

不整脈手術

心疾患とくに弁膜症では、心房細動という不整脈が合併することがあり、それが原因で脳梗塞や心不全などを引き起こすことがあります。心房細動は直接死につながることはほとんどありませんが、脳梗塞や心不全発症により、生命予後やQOLが著しく悪くなる疾患です。心臓手術時に原因疾患の治療と合わせて不整脈を治療することが可能です。不整脈有病の方は合わせて治療をお勧めさせていただきます。

成人先天性心疾患根治術

成人先天性心疾患

生まれつき心臓の解剖学的異常(構造異常)を先天性心疾患といいます。医療が進んだ現在、出生前に診断がつくことが多いですが、診断がつかなかったり、幼少から青年期に異常を呈さないことがあります。その代表に心房中隔欠損症などがあげられます。心房中隔欠損症は、右心房と左心房の間に本来ふさがっている壁に穴が開いている疾患であり、穴の大きさにより症状が変わります。穴が大きいと30歳代~労作時息切れや不整脈が出現することがあり、心不全症状を呈する方がいます。手術はカテーテルで閉鎖可能な方が多いですが、解剖的に困難な場合や他の心疾患がある場合、手術で閉鎖します。

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