脳神経内科

当科で扱う主な疾患と症状

  • 脳血管障害(特に脳梗塞)
  • 認知症(アルツハイマー病、レビー小体病、前頭側頭葉型認知症)
  • 頭痛
  • てんかん
  • 神経難病(パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、筋ジストロフィーなど)
  • しびれを呈する疾患(末梢神経障害)
  • 髄膜炎、脳炎 など

脳卒中の診断と治療

当院の脳血管障害の診療は、脳梗塞(脳の血管が詰まる病気)を主に脳神経内科が、脳出血(脳の血管が破れる病気)を主に脳神経外科が担当しています。脳卒中センターでは、両科が毎朝一緒にカンファレンスを行っています。万一手術が必要な場合も迅速な対応が可能です。また多くの国際共同治験や、国立循環器病研究センターをはじめ全国の脳卒中基幹施設とも協力して幾つかの臨床研究にも関わり、脳梗塞の「明日」の標準的な治療を目指した、先進的な取り組みも行っています。

超急性期

脳梗塞発症直後の超急性期には、薬剤(t-PA)を用いた血栓溶解療法や、脳神経外科と一緒にカテーテルを用いた血栓回収療法など、血行の再開通を目指した治療を積極的に行っています。(ただしこうした治療は、可能な条件が脳卒中学会などから定められています。)

急性期〜亜急性期(半日〜2週間ほど)

点滴や飲み薬などで進行をくい止め、悪化を予防する治療を行うとともに、頭部MRI、MRA、脳血管3D CTアンギオ、頸部血管エコー、24時間心電図、経食道エコーなどの検査を行い、脳梗塞の原因究明と再発予防の対策を早期から開始します。またリハビリテーションも通常、入院当日か翌日から始め、早期から機能回復や社会復帰に向けた取り組みがスタートします。再発予防のために、生活習慣など見直していただく教育指導も、看護師を中心に行います。

亜急性期〜慢性期

軽い症状の場合は、治療とリハビリの後、直接自宅に戻ることができます。もし、麻痺や失語などの症状があれば、地域で連携している回復期リハビリ病院へ転院し、自宅や社会復帰に向けたリハビリを続けていただきます。

パーキンソン病の最新の治療

パーキンソン病は、脳内のドパミンが足りなくなり、動作が緩慢になったり、関節が固くなったり、ふるえたりといった様々な症状がでる病気です。治療の基本は内服治療で、様々な薬剤を組み合わせながら、症状をコントロールしていくことで、元気な状態で日常生活を送ることができます。しかし、パーキンソン病の発症から年数がたつと、パーキンソン病の薬の効果が短時間で切れてしまい動きが悪くなるウェアリング・オフ現象や体が勝手に動いてしまうジスキネジアといった、運動合併症が生じます。そうなると内服治療のみで症状を安定した状態にコントロールすることが難しくなります。このような場合に、新たな治療選択肢となっているのが、デバイス(機械)を用いて、症状のコントロールを補助するデバイス治療(Device Aided Therapy; DAT)です。デバイス治療には、脳深部刺激療法(DBS)、レボドパ・カルビドパ経腸療法(LCIG;デュオドーパ®)、ホスレボドパ・ホスカルビドパ水和物持続皮下注があります。

脳深部刺激療法(DBS)

1990年代から海外ではじまり,日本でも2000年に保険適応となりました。脳の深いところに電極となる細い針を植え込み,胸部にパルスジェネレーターと呼ばれる,小型の刺激電源を埋め込み,両者をリード線でつないで,電極を通して,脳の奥深くに電流を持続的に流し,薬物治療でコントロール困難な症状の軽減を図るものです. L-dopa製剤がよく効くにもかかわらず、ウェアリングオフやジスキネジアがでてしまって困っている方や、幻覚、吐き気などのお薬の副作用が強くでてしまい、お薬が十分に増やせない方に有効です。DBSによってオフの状態を持続的に持ち上げ、お薬を減量することにより、ジスキネジアを減らすことが期待できます。ただし、L-dopa製剤が効かない症状には効果は期待できず、オンの状態を上回る効果はありません。DBSのメリットはオフの状態を持続的に良くすることで一日を通して良い状態を保つことができるほかに、お薬の量を減量することができます。DBSは心臓のペースメーカー同様に電磁波やMRIなどの影響を受けるため、日常生活で注意が必要になることや数年ごと電池を交換しなければいけないこともデメリットとして挙げられます。DBSを検討されたいとお考えの方はまず主治医に相談してください。当院ではDBSの手術は行っていませんので連携施設へ紹介させていただきます。

レボドパ・カルビドパ経腸療法(LCIG;デュオドーパ®)

2016年の9月から、「レボドパ・カルビドパ配合経腸用液(LCIG; デュオドーパ®)」という新しい治療法を本邦でも行うことが可能となりました。これは、内視鏡を使用して胃ろうを造設し、空腸までチューブを挿入します。そのチューブに体外式のポンプをつなぎ、レボドパ・カルビドパ製剤を持続的に投与するデバイス補助療法の一つです。進行期では、運動合併症の治療のために少量のレボドパ製剤を何回にも分けて内服するという方法を選択せざるを得ないのですが、内服回数が多いのは大変であり、また血中濃度の「山」と「谷」ができてしまいます。LCIGはポンプを用いて一定速度で薬を投与し続けるので、血中濃度の「山」と「谷」がなくなり、血中濃度を一定に保つことができるため、ウェアリングオフ症状を改善させ、ジスキネジアの発現をおさえることができます。 また、ポンプの重さは約500g程度(ポンプ+薬剤+カセット)で、ウェストポーチで腰に巻いたり、ショルダーバックなど肩にかけたりして携帯できますし、お風呂に入るときにはポンプを取り外すこともできます。主な合併症には、胃ろうに伴う感染やチューブの挿入に伴うトラブル等があります。適応評価と治療開始の準備のために2週間程度入院していただきます。

ホスレボドパ・ホスカルビドパ水和物持続皮下注(ヴィアレブ®)

2023年にホスレボドパ・ホスカルビドパ水和物持続皮下注という新しい治療法が保険適応となりました。レボドパ・カルビドパのプロドラッグ(体内で代謝されてから作用を及ぼすタイプの薬)であるホスレボドパ・ホスカルビドパ水和物を体外のポンプで持続的に皮下注射することで、症状の日内変動(ウェアリングオフ)の改善を期待することができます。皮下注射でありほかのデバイス療法と比較すると侵襲性が低いことが特徴の治療法です。皮下に投与するため皮膚トラブルが起こりえること、激しい運動は控えることなどに注意が必要です。ポンプの流速(薬の投与量)を調整することで、症状の変化に対応した調整が可能となります。

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